白馬沢右俣(シーズン最高の充実した日帰りアルパインスキーツアー)

【山行日】2019年5月11日(土)前夜発日帰り
【場所】白馬沢右俣
【メンバー】Oさん(現地集合)、Sさん、Y(投稿者)
【日程】6:15猿倉→7:30白馬尻→11:45~12:00頂上宿舎裏分岐点→(柳又谷滑降)→12:20シール移動開始→13:45ドロップポイント→(白馬沢右俣滑降)→15:00~15:30白馬尻→16:00猿倉

白馬沢右俣源頭を滑る
この斜面を滑ることですべての苦労が報われました。

【レポート】
 今回は白馬岳2号雪渓に行く予定でしたが、出合から確認するとかなりデブリが酷くて急遽予定を変更して白馬沢右俣に行ってきました。(計画書にはサブルートとして記載しておきました。)行程が長くハードなルートではありましたが、天候、雪質等絶好の条件の中、快適な斜面を滑ることが出来、充実した山行になりました。

 SさんとYは前夜に埼玉を出発し、オリンピック道路にあるトイレ付駐車場で仮眠。Oさんは立山ツアーの帰路で現地に直接入り集合することに。仮眠後コンビニに寄って朝のコーヒーを調達しているとちょうどOさんが合流。そこから一緒に猿倉へと向かいました。
 GW10連休の後だけに、猿倉の駐車場はかなり駐車台数に余裕がありました。雪は猿倉駐車場からすぐに着いていて、そのまま大雪渓までつながっていましたので、初っ端からシール登行可能でした。今シーズンは当初少雪でしたが、4月が低温で降雪が多かったため、5月の北アルプスは例年と比べるとかなり積雪が多い状態で、山スキーには最適の条件です。長走沢は割れていたものの上流1つ目の堰堤の上でつながっているため渡渉不要でした。(一度スキーは脱ぐ必要があります。)

白馬尻から見た白馬沢出合
左上部の白い斜面が右俣の源頭部です。

 大雪渓は2号雪渓からのデブリがかなり堆積していて、2号雪渓から下は快適な滑降は望めません。白馬尻上部まで右岸側をややトラバース気味にトレースがついています。

白馬尻上の大雪渓
デブリで埋め尽くされてしまっています。


 「Yさ~ん」2号雪渓出合手前付近で小休止していると上方から声が。なんと同日白馬に来ていた我が会のHさんと偶然遭遇。今日はまだ滑っていなかった大雪渓を滑降予定とのことでした。

出合から見た2号雪渓
大雪渓のデブリの元凶はココでした。
これを見て2号雪渓の滑降は断念。

 出合から2号雪渓を偵察してみると、大雪渓のデブリの源はすべて2号雪渓になっており、かなり上部からデブリで埋め尽くされている状態。この時点で2号雪渓の滑降は諦め、白馬沢に変更するか、大雪渓をそのまま下るか、時間と体力に相談して頂上宿舎付近で決めることにしました。

  3号雪渓の出合を過ぎたあたりから数日前の新雪が残っており、登りではここを選ぶとシールが効きやすくて有効でした。シートラ嫌いのYは頂上宿舎上までシールで登り切りましたが、Oさん、Sさん、Hさんは潔くシートラに。他のスキーヤーも9割の方が途中でシートラに切り換えていました。

2号雪渓出合から上は大雪渓も綺麗な雪面に
急斜面を越え、小雪渓を登り詰めると背後に
杓子・白馬鑓ヶ岳が(水滴で見辛くスミマセン)
あちらも雪はバッチリですね。

 小雪渓を登り詰め、頂上宿舎まで来た時点で11時半。ここで白馬沢に行くか、どうするか相談です。OさんもSさんも体力的な余力はありそう。時間的には14時にドロップポイントまでたどり着けそうなので、問題なし。ということで、白馬沢右俣に挑戦することに決定。頂上宿舎裏の縦走路の分岐点まで登り、柳又谷源頭部へと向かいます。

分岐点からの旭岳
柳又谷源頭へは右へと下っていきます。

 源頭部へは分岐点からすぐ雪が着いていて、ほぼ歩きなしで入れました。さっそくシールを剥がして本日最初の滑降です。滑り出し直後に雪庇状の急斜面を下りるところがありますが、それ以外は緩やかで広々としていて快適そのもの。これぞ源頭部というパラダイスです。雪もフィルムクラストしたザラメが少し融け出した状態で、板が気持ち良く走る最高の条件。いつまでも滑って行きたくなる衝動に駆られてしまいますが、この後三国境を回り込んで小蓮華岳への縦走路に登り返さなければならないので、標高2500mくらいから 右へ右へとトラバースして高度を落とさないようにしていきます。

柳又谷源頭
天国のような斜面がひらすらつづいています。
こんなパラダイスを我々で独占
快感です。

 右に回り込み、枝尾根を越える手前でシールを再装着。しばらく水平移動の後、三国境から雪倉岳へつながる縦走路へ向けて、雪のなるべく繋がっているところを登行。雪が無いところは板を外して、2700m地点で縦走路に出ました。縦走路に出ると、目指すドロップポイントが目の前に見えますが、その斜面は雪なし。縦走路の東側は雪が着いていたため、登り返しを避けようと、縦走路を三国境へと登り詰めずに、ここから谷状のところにトラバース気味に降りて、小蓮華岳への縦走路の鞍部に出ようと試みましたが、谷に降りるところに雪庇が出来ており、弱点から降りてみたものの、トラバースの斜度がきつく、雪も安定していないためスラフとなって足元から崩れていきやすい状態で、デンジャラスでした。(Yは無理やり通過しましたが、Oさん、Sさんは無難に尾根上部からアプローチしました)縦走路に出たらほんのわずかシートラで小蓮華方面に登るといよいよドロップポイントです。

ドロップポイントの様子
背後は小蓮華岳に続く縦走路です。
白馬岳方面もご覧の絶景

 出だしは比較的緩やか(とは言っても30度弱くらい)な源頭の大斜面で、まさにこの斜面を滑るために苦労してアプローチしてきた価値のある最高の斜面。雪質も締まったザラメで申し分なし。滑り降りるにつれて徐々に斜度が増し、幅が狭くなり、雪が重くなってきますが、上半部は至って快適な極上斜面。急傾斜になって一部スラフが流れる箇所がありましたが、比較的雪も安定していて、とめどなくスラフが流れ続けるようなことはありませんでした。ここで別Pの単独スキーヤーと遭遇。ほぼ同じルートで来られたようでした。(先にオイシイ斜面をいただいちゃいました。)

白馬沢右俣源頭部
思い思いに好きなようにお絵かきします。
これまた我々で独占です。
下るにつれて斜度が増し、雪が重くなるので慎重に
(でも核心はこの後でした)

 中間部はデブリゾーンで、ここは正直苦行エリアです。ある程度柔らかいデブリもありますが、どうしようもなく固いものもあるので、滑降する要素はほぼゼロです。スキーの板がデブリに引っかかって転倒したり、デブリに混じった大きな岩に激突したり、事故が起きやすいので、疲れた体に鞭を打ってどうにかかわしました。修行度という意味では本日の核心でした。

魔のデブリゾーン

 下部は広く快適な緩斜面。雪はさすがに重いですが、デブリゾーンと比べると天国のように快適な斜面でした。そのまま白馬尻で大雪渓に合流です。

最後の快適緩斜面
雪は重いものの、デブリと比べれば天国です。

 大雪渓からはラクラク下山かと思いきや、デブリのおかげで右岸まで出なければならず、白馬沢出合からは結構登らないとならない上、またスキーを履いてデブリ横断をしなければならないところもあって、最後の修行でした。
 右岸のトレースまで出てしまえば、長走沢で一部歩きがあったり、少々登り気味の所や枝を踏んだり微妙な雪のつながりの部分はあるものの、猿倉までずっとスキーで降りてこれました。
 10時間近い行動時間の長丁場でしたが、あらゆる要素が凝縮され、充実感・満足度の高い山行で、充分お腹いっぱいになりました。

GPS軌跡
改めて地図で見ると、オイシイ斜面を滑っている距離がいかに短いことか…
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