大宮アルパインクラブ
DATA CONTENTS
日付 2008.10/12〜13
宿泊 テント泊
天気 10/12 (曇のち晴れ) 10/13(晴れ)
メンバー 横田川、村上
歩行時間 報告文参照
アクセス 車をオツルミズ沢の出合にデポ
報告者【横田川】
20年以上昔、今回計画した水無川に来たことがあった。その時は、北沢を詰める計画だった。1日目に北沢と真沢の出合の岩棚にテントを張った。しかし、二俣からしばらく行った上流で雪渓のために稜線に追い上げられ敗退してしまった。この時、二俣の岩棚から見上げた真沢の100m以上ある弊ノ滝の残像がいつまでも残っていた。漠然とこの真沢も詰めてみたいと思った。そして、その時がやっと巡ってきた。

10/12 (曇のち晴れ)オツルミズ沢出合の先まで車で行けるかと思っていたが、手前の林道が崩壊していてそこまで行けない。出合の約2km手前に車を置いて出かけることとなった。北沢に向かうと言うアベックのパ−ティも我々といっしょに出発した。林道を歩いているとオツルミズのサナギ滝200mが遠望できる。やっぱりすごい。出合近くになると今度はカグラ滝も見える。80m程だけどこれもすごい迫力をもって水を落としている。オツルミズ沢を遡行したことがあるが、豪快なすばらしいクライミングができる勧めの沢である。また機会があったら登りたい沢である。十二平までは林道歩きである。この先から草に覆われた踏み跡程度の道になる。踏み跡のはっきりしない所は河原沿いを歩いてデトノアイソメまで行く。ここまで1時間半程かかった。雪渓が残っているかと思っていたがまったくない。ここで沢支度にする。下山はここデトノアイソメに降りている鉱山道尾根の踏み跡を使う予定なので、どれがその尾根か観察した。でも、どうもはっきりその尾根が特定できなかった。まあ上に行けば降り口が分かるのではないかと漠然と考えていた。降り口が分かれば踏み跡が付いているものと思っていた。しかし、その考えは甘かった。支度をしていると、そのうち北沢に行くという2人パ−ティも追いついてきた。
 沢は滝ノ沢出合までゴ−ロである。滝ノ沢も一度遡行してみたい沢である。尾根の高い所はすでに紅葉している。滝ノ沢を過ぎると暗峡という小ゴルジュがあるが簡単に巻けるし、へずっても行ける。沢はオカメ沢が出合う所で左に屈曲。持ってきた遡行図にはこの先に4m滝があるはずだが分からなかった。谷はまたすぐに右に屈曲している。巨岩を乗り越えて進む。手元の遡行図の6m2条の滝を越えていくと、谷筋が険悪なゴルジュになる。奥に10m程の滝がかかっている。ここは谷筋の通過は無理。遡行図に従って、右から巻くことにした。ちょっと戻ってルンゼを登り、潅木帯をトラバ−ス。この滝の上流は崩壊した雪渓が残っていた。その上流にスノ−ブリッジがかかっている。御月山沢に30m懸垂で降り、崩壊した雪渓の上に立った。手元の遡行図ではこのスノ−ブリッジを巻いているが、我々は下を通過できると読んで谷に降りた。ところで、この懸垂のとき落石がザイルに当たったらしく、村上氏のザイルが破断しそうになってしまった。もう登攀には使えない。スノ-ブリッジ下まで行くと、それが頭上に覆い被さり、気味が悪い。恐る恐る下を潜って、すばやく岩棚を走って通過する。スノ−ブリッジの先に10m程の滝があった。左岸の微妙なスラブに取り付いて滝の落ち口上に出た。この落ち口上でショルダ−で右岸に渡りゴルジュを進んだ。ちょっとは楽ができたかと思ったら、また登れない小滝が現れた。村上氏が左岸のいやらしい草付にザイルを伸ばした。私がつづいて草付をトラバ−スして沢に降りたが、その上の3m程の滝が登れないことが分かり、巻き直さなければならなかった。潅木まで登りまた30mの懸垂である。西沢を過ぎると北沢の出合までこの谷の第一の核心部と思われるゴルジュ帯がある。例年9月頃まで雪渓があるらしいが今回はなかった。ゴルジュを進むとまず右から落ちる10m滝が行く手を阻む。突破は無理と判断。右岸のいやらしい草付を登って潅木帯に入る。この10mの滝の上にも突破できそうもない10m程の滝が見える。なんとか最初の10m滝上の潅木帯まで這い上がった。潅木に残置シュリンゲがあるのでここから下っているらしい。しかし、下ってもその上の滝の側壁が登れるかどうか分からない。登れなかったらまた登り返して、巻き直さないといけない。ここは確実性を取って、上の滝も巻くことにした。しんどい巻きであった。1時間程巻いてこのあたりと言う所にやはり残置シュリンゲが潅木にあった。40mの懸垂で降りた所はちょうど関門ノ滝の下だった。あとで案内を見ると、最初の10m滝の巻きで懸垂してよかったらしい。2番目に見えた滝の側壁は登れるとあった。ここのゴルジュ突破は難しい草付の登行、シャクナゲの高巻き、40m懸垂とどれもハ−ドな内容である。正面の関門ノ滝50mは物凄い迫力で水を落としている。前回来た時はこの滝も巻いてしまった。滝下から見ると右岸は傾斜も緩く、ホ−ルドもあって簡単そうである。時間短縮もあって、ノ−ザイルで取り付いてそのまま登ることにした。この上の逆くの字50mのナメ滝の方がいやらしい。案内図は右を大きく巻いているが、我々は滝の中段を横切って右岸の側壁に取り付くことにした。Vプラと言ったところか。そこまで行くのも途中、水際のいやらしいトラバ−スをしなければならなかった。2ピッチで滝上に出た。滝上に出ると、二俣の全貌が見えた。北沢から流れ落ちる大滝、真沢の弊ノ滝が見渡せる。簡単なナメ滝を登って二俣に到着した。すごい景観の場所である。二俣には岩のテラスがあり、泊まるときはこの岩棚の上になる。まだ3時前であった。多くのパティ-は1日目をここまでとする。ただ我々は弊ノ滝150mの上流まで行きたいと思っていたので弊ノ滝に取り付いた。右側の濡れていない所をフリ−で50m程登り、水流を左に渡る手前でアンザイレンした。傾斜はないが濡れたスラブ状の滝を登るので気が抜けない。3級程度である。結局3ピッチで滝上に出た。滝上は一変して傾斜のないゴ−ロ状の谷となる。ヤレヤレとひと安心する。滝を抜けた時は4時になっていたので、テン場を捜すことにした。ウロウロして最適の場所を見つけた。焚き火もでき、平らにできる所があった。ここまで来れば明日の行動が楽になる。夕闇とともに寒くなったが、焚き火がすぐに暖かくしてくれた。いつのまにか満月に近い月あかりが山をほんのり明るくしていた。夜遅くまで無駄話をして寝付いたのは11時になっていた。

 <タイム> 駐車場 6:00 オツルミズ出合 6:25 デトノアイソメ 7:20〜7:40 暗峡 8:25 10m滝下巻き始め 9:00 滝上 9:45 スノ−ブリッジ下 10:00 西沢出合 11:15 10m滝巻き始め 11:30 その上の10m滝上 12:30 関門ノ滝上 12:50
逆くの字滝上14:15 北沢出合 14:50 弊ノ滝上 16:00 テン場 16:40

 10/13(晴れ) 気が付いたらもう外は明るくなっていた。6時であった。朝食の用意をして出発する。この時、私は腰に違和感を覚える。ギックリ腰の一歩手前の感じである。これ以上酷くならないことを願う。ゴ−ロ歩きで始まったが、すぐに谷が左に曲がる所で25m滝が現れる。水流右が行けそうだが、遡行図では右を巻いているのでおとなしくそれに従う。が思った以上にいやらしい巻きでザイルを出す事にした。滝上は谷はU字になり、岩盤の上を水がなめる様に流れる。谷筋を進んで行くと奥に右から落ちる滝が見えてくる。白龍ノ滝に違いない。さらに進んでその険悪な姿が現れた。この滝の突破がこの沢の第2の核心部と思われる。滝下まで行けないので、(本当は行けた)斜めから見る感じになる。この滝を巻く場合はちょっと戻って右のスラブを登って潅木帯に入るらしい。巻きも簡単そうに見えない。我々は正面の潅木まで一番短いル−トを直登することにした。村上氏が取り付いた。悪い草付の岩場を登って、最後は被り気味の壁を細い潅木だけを頼りに強引に体を引き上げた。よくもこんな所を登ったものだと感心した。潅木を這い上がり尾根を越して、滝の落ち口をめざした。ちょっと登り過ぎたが白龍ノ滝の落ち口上に降り立つことができた。この滝の突破に2時間かかった。この上は岩盤の上を水が流れる沢床になり気持ちが良い。すぐに右から支流の祓川が合流してくる。真沢の本流と2:1くらいの水流である。案内に祓川の方が快適に登山道まで遡行できるとあったので、こちらに進路を取る。正面に250mあるらしい祓川大滝が逆光をついて立ち塞がる。快適に登れるらしい。しかし、登るにしたがって高度感がすごくなり、早く平らな所に立ちたいと思うようになる。滝の最後30mは傾斜も強くなり、フリ−で行けなくなった。アンザイレンして正面を登る。W級くらいか。この滝が終わったと思ったら7m程の手強そうなチムニ−滝がでてきた。空身で取り付いてみると意外と簡単に抜けた。その上にも4mの滝があったが大したことはなかった。この上にはもう滝はなくナメ床になり、穏やかな渓相となる。稜線も間近に見える。これですべての滝の登攀は終わり開放された。源流部のナメ床を快適に進む。沢筋が3俣になった所で、案内図どうり右俣に進路を取った。そこから沢筋を行くと登山道が横切っていた。薮漕ぎなしで登山道に出た。御月山まで登ってそこで大休止。沢支度を仕舞った。上から見ると白い岩肌のスラブに黒い沢筋が山肌に切れ込んでいる。尾根筋は赤や黄色そして緑の斑で覆われ、目を楽しませてくれる。雲に隠れた越後駒から中ノ岳の稜線が見渡せる。太陽の日差しが尾根の緑や赤、黄色そして白い岩のモザイクに光を当てて輝く。紅葉がちょうど最盛期であった。ここで単独で五竜から来た女性に会う。これから中岳に向かうと言う。登山道と言えど、女ひとりでオカメノゾキの稜線を縦走するとは大したもんである。少し雲が出てきたがいい天気である。女性と別れて鉱山道尾根の下降点のある荒山に向かう。途中、私がへばって村上氏にザイルを持ってもらう。2時間で3つのコブのある荒山に到着する。この辺からデトノアイソメに下る踏み跡があるはずである。下降点を示す赤テ−プがないか捜すがない。ここから水無川方面は余りに斜面が急であった。もう少し先に行くと、指導標のある所があった。そこから水無川の方へ下っているような跡がある。ここだろうと言うことで、ブッシュを掴んで下り始めた。ところが、鎖跡の所から分からなくなってしまった。仕方ないのでそのまま下ることにした。とうとう沢筋に降りてしまった。そのまま沢筋を下降したことによって、えらい目に会うことになった。序々に滝が現れ、そのたびに懸垂を強いられた。とうとうデトノアイソメに着く前に沢の中で日が暮れ、懐電で下降支点を捜す羽目になった。暗闇の中、村上氏が辛抱強く下降用の支点を作った。40mの滝では懐電でハーケンの打てるリスを探し、なんとかハ−ケン2枚で支点を作り、これに命を預けた。このとき私はミスって懐電を滝に落としてしまった。懐電なしの懸垂下降となった。暗闇のなか、なんとか最後の20m滝上まで降りた。この時潅木に残置シュリンゲを見つけ、有り難かった。まだ新しいので最近使ったに違いない。我々と同じようにこの沢筋に吸い込まれた先駆者がいたということである。デトノアイソメ近くになると、幸いに谷が開け、月の淡い光と白い沢床のため懐電なしでも下ることができた。本流のデトノアイソメにPM 7:00にやっと到着した。一息つきたかったが、休むことなく下山を続けた。しばらく沢筋を歩く。川原は月の明かりがあるので懐電なしでも歩くのはそれほど困難ではなかった。しかし、いづれ十二平からの踏み跡に入らなければならない。踏み跡は草に覆われ分かりづらい。この暗闇でその踏み跡が見つけられるか不安であった。来た時の記臆を必死に辿る。見覚えのある所があった。そして、運よく踏み跡に戻ることができた。ところが、懐電のない私には足元が見えない。一度踏み跡から沢に落ちそうになった。ヤバ。草が岩に見え、なんどもよろけた。十二平の林道に出たときはやっと緊張から開放された。もう8時を過ぎていた。最終下山報告時間をPM8:00にしていたと思っていたので、車まで駆け足をした。PM8:50にとうとう車に戻った。えらい山行だった。改めて村上氏と握手。着替えもせず、取り合えず携帯のつながる所まで出ることにした。9時すぎ、石倉さんに下山報告をした。これで安心。車に残っていたみかんを口にするとえらくうまく感じた。着替えをして、温泉を諦め帰路に付いた。      追)あとで計画書を見たらPM10:00が最終下山報告時間になっていた。焦るんじゃなかった。

<タイム>テン場 7:30 25m滝下 7:40 白龍ノ滝下 8:15 滝上 10:15 祓川出合 10:40 大滝上 11:30 チムニ-滝上 11:50 3俣 12:00 登山道 12:15  御月山12:30〜13:00 荒山下降地点 15:00  デトノアイソメ 19:00 車 20:50

*この水無川真沢は百名谷に推薦される沢である。登攀性が高いだけでなく、いろいろ難しい。しかし、二俣あたりの自然の造形はすばらしく、ここを登るのは気持ちがいい。上級者には充実した山行になる。車で来る場合、下山をどうするか問題である。鉱山道尾根を使う場合は、要注意である。下ったことのある経験者の話を聞いた方がいいかもしれない。                       横田川
関門の滝
二俣
弊ノ滝を昇る
祓川大滝