大宮アルパインクラブ
DATA CONTENTS
日付 2009/5/1(金)〜5(火)
宿泊 前夜泊+3泊4日(テント)
天気 快晴→曇→高曇り→晴れ
メンバー 横田川(L)・岡野・ちえ(3名)
歩行時間 たくさん(本文参照)
アクセス 浦和→東松山→関越→北陸(富山IC)→馬場島→
北陸(富山IC)→関越(長岡JCT)→東松山→浦和
報告者 【岡野】 【ちえ】
5月2日(1日目・晴れ)
★馬場島(8:25)ーブナグラ谷(1150メートル地点)(10:00)ー赤谷山(15:05)
 夜行で出発し、3時間程度仮眠したため、(いつもどおり)若干遅い出発となった。荷造り時に各自の装備を点検し、不要なものを可能な限り置いていく。それでも4日間の食料や登はん具で荷物は20キロを超えていると思われる。単なる馬力にはあまり不安はないが、難しいポイントでこの重さがどうでるのか若干不安を感じる。天気は穏やかで日差しが強い。馬場島を出発後10分と経過しないうちに暑くなる。タイツやフリースなどを脱ぎ、長袖シャツ1枚になる。早月川から別れ、ブナクラ谷の雪渓を利用して歩いていく。一部、雪が解けて川が見えてしまい、渡渉しなければならない箇所もあるが、水量は少なく飛び石を渡ることができる。例年、雪は今年よりも多いため、GWであればブナクラ谷を詰めて問題なさそうだ。雪は概ね締まっており、崩壊する危険も少ない。また、トレースも付いているため歩きやすい。こういった、雪渓やスノーブリッジの状況の見極めは、横田川さんの経験の強さを思い知らされる。どの状況になれば雪渓が崩壊する危険があるのか、逆に安全なのか、実際の経験がものを言うと感じた。なお、2日目の朝に会った別パーティは雪渓処理に不安があったため、赤谷尾根を登ってきたとのことだった。かなりの藪こぎを強いられたらしく、半そでの腕を見れば傷だらけだった。1日目は、アイゼンはつけず、つぼ足のまま徐々に傾斜を増す雪渓を登っていく。トレースの恩恵もあり、かなり早いペースで登っていくことができた。ブナグラ谷(1150メートル地点)に10:00到着。天気晴朗ではるかの山々が非常に美しく見える。その後も初日は体力勝負で高度を稼いでいく。特に難しいポイントはなく、15:05、今日のテン場の赤谷山山頂に到着。剣岳が圧倒的な質量を持って重畳とした尾根のうえにそびえている。「剣見るなら赤谷山♪」との唄があるようだが、確かにその通りである。ここまでなら危険箇所はほとんどなく、登はん具も不要である。技術のない私のようなレベルでも赤谷山ピストンならばリスクも少なく登ることができ、かなり穴場でおススメスポットだと思う。テン場ではスノーソーで雪のブロックを切り取り、風上の富山側に並べた。雪が締まったこの時期、スノーソーの威力は絶大であった。数百グラムでの重量対効果は非常に高い。その後、夕食にはちえさん渾身の粕汁をいただく。一人暮らしの我が身には下界を含めて最高の食事だった。グルメでなにかとご注文の多いリーダーもご満悦の様子。
5月3日(2日目・晴れ)
★赤谷山(6:50)−大窓(10:00)−池の平山(12:30)−小窓(14:30)
 翌日5時起床。軽量化のために120pのモンベルの軽量エアマットと3シーズンシュラフで寝たが、やはり明け方は寒くつらかった。今日からが本格的なバリエーションの始まりである。赤谷山からやや急な斜面を下降すると本格的な北方稜線が始まる。たおやかな稜線は先に行くほどに急峻で荒ぶる巌に変化していく。高度感のある赤はげのトラバースでは5メートル程度イヤらしい箇所があり、ザイルを出してもらった。難易度は低いが、万一滑落したら助からないであろう。しかし、総じてトレースがしっかりついているため、雪がしまっている時間帯はかなり安定している。また、ハイマツの枝も出ているためホールドには事欠かない。白ハゲを通過したあたりからは、大窓への下降となる。トレースとハイマツを頼りに我々はノーザイルで下る。後続パーティはザイルを使用した様子だ。リーダーの経験では、大窓のコルから始まる雪渓が白萩川の本流を埋め、その先の馬場島へのエスケープを容易にしているとのこと。確かに歩きやすそうな雪渓が白萩川に向かって伸びている。大窓に降り立ち、休息なしで池ノ平山に登り返す。当初は急な雪稜歩き、後半の上部は雪量が減り、岩と雪とハイマツがミックスした状態を登る。一部には夏道も露出していた。岩は非常にもろくなっていた。池ノ平山の登りはかなりの傾斜で、体力的に厳しい。単純な体力で言うとこのあたりが疲労のピークだったと思う。池ノ平山12:30着。後日、撮影した写真を見ても、疲労のせいで表情がどこかうつろになっている。小窓への下降は、上部は大窓同様にハイマツを頼りに下る。うっかり枯れたハイマツに体重をかけないように注意する必要がある。その後、トレースに沿ってガリーの様な雪面を左にトラバースする。この瞬間は雪も腐っていて緊張した。また、トレースがない場合には、ルートファインディングに苦労しそうだ。このトラバース地点の下は切れ落ちているため、3ピッチ懸垂下降する。小窓に着いた時点で緊張の糸が切れ、また、当初の予定地である三ノ窓まではかなり時間がかかるため14:30小窓到着をもって今日の行動を終了する。天候は、ややガスってきてはいるが風もそれほど強くなく安定していた。夕食にはラードベースのペミカンを入れて作ったカレーを食べる。ペミカンは冬合宿の八ヶ岳に続いて作成した。下界では脂っこ過ぎると思うが、費用対効果、重量対カロリーで効率がよい。ある程度日持ちもするし、冬山では見直されても良いと思う。
5月4日(3日目・高曇り)
★小窓(6:10)ー小窓尾根合流ー小窓の王トラヴァースー三の窓へ下降(9:05)ー池の谷ガリー ー池ノ   谷乗越し(9:50)ー劒岳山頂(12:00)ー早月尾根・早月小屋テン場(14:40)
 前日断念した三の窓までの行程で越えなければならない急峻な雪壁を見ていたので、この日は早くから行動。雪が締まっている間にできれば池の谷ガリーまでたどりつきたい。登り出しの小窓尾根までも斜度がきつく、一歩一歩かせぐ。小窓尾根合流から一部かなりの急峻な壁でザイル使用。トラヴァースも滑落したらオシマイの緊張感だ。小窓の王を巻いてみるとそこにはさらに急な下りが待っていた。ここは懸垂しかなさそうだが下の様子もわからないほど長い。リーダーの40mと私の50mザイルをつないでシングルで降りることに。私がトップでおりる。ザイルを落としながらの懸垂で、ザイルに気をとられてトレースの確認を怠ったことと、出発時にルートとミッションの確認をしないまま飛び出したことにより、ルートミスをしてしまった。途中いきづまったところに、三の窓からみていたパーティから「おねえさん、ルートちがうよ!」との掛け声。なんと私が降りていた先は氷瀑であった。リーダーも降りてきて指示をくれ、氷壁を登り返してなんとかリカバー、後続を待つ為に安全地帯にピッケルでザイルを固定して確保。岡野さんが降りたところへ横田川リーダーがクライムダウン。同時に3人パーティがダブルアックスでクライムダウンしてきた。すごい!と思いつつも見ていると時折ステップが崩れるのでハラハラする。無事三の窓に降り立ってほっとする間もなく、見上げるような池の谷ガリーの登りが待っていた。トレースができていたので楽ではあったが、滑落したらどこまでも止まらないという緊張あり。念のためザイルでつながる。加えて、チンネを登り降りしている軍団から岩や雪塊がバラバラ降ってくるのでゆっくり休んでもいられない。リーダーをトップにかなりがんばって抜ける。池ノ谷乗越まできたところで一本。そこには3張りほどのテントがありドーンと構えられたトイレには参った。しばし休憩のあと、見ているだけで身震いがでるような八つ峰のナイフリッジにたくさん人がいるのに驚きながら劒本峰を目指して出発。出だしから危険を感じる斜度の壁。続くリッジをたどると目と鼻の先にライチョウがいる♪初めて間近に見るライチョウに声をあげながらそっと近づくが逃げない。ところが喜んでいる場合ではない。その先も両端がすっぱり切れ落ち、岩場が露出した平均台のようなリッジだ。さすがに怖くなって申告。リーダーがトップでザイルを張り、確保してくれたところをそろりそろりと渡る。なにしろ荷の重さは初めて級なのでバランスを崩すのが不安なのである。無事3人通過。その後の雪稜はさほどでもなく長次郎の頭に至る。ここから最後の短いが急瞬なザラメの雪壁。おりてくるパーティがいたが、リーダーはお構いなしにザイルをはってくれる。そんなに怖くはなかったのでサクサク登る。2ピッチめはラストの岡野さんがそのままトップをまかされ気合をいれてスタート。無事頂上直下の雪原まで進んだ。あとは一歩一歩かみ締めながら近づいてついに山頂を踏む。みんなで喜びの握手を交わし互いに祝福!神社も屋根まで埋もれたせまい山頂で記念撮影とあいなる。360度のパノラマに感動、山スキーで賑わう真砂方面や立山、歩いてきた赤谷山からの厳しく長い稜線を感慨深くながめながら、ゆっくりもしていられない。これから早月の下り始めは急で危険だからだ。15分の休憩の後下降に入る。カニのハサミなどの鎖場や岩と氷の箇所を懸垂も交えて慎重に下り、最後はグサグサの腐れ雪にぐっしょり濡れながら無事早月小屋まで降りる。今日のテン場は風もないのでブロックもいらない。みんなぐったりなので適当に整地をしてさっさとテントをたてて潜り込む。今宵のディナーは残るペミカンでカレー。もう登らなくてもよい、早起きしなくてもよい最後の夜。開放された気分でゆっくりして就寝。軽量化の為シュラフは3シーズンを選んだ初心者2人。真ん中の私はよかったが岡野さんは寒かったらしい。すみません。。。          
5月5日(4日目・晴れ) 
★早月小屋 8:30 ー 馬場島 11:30  
 ゆっくり起きてパスタの朝食。芯があるといってリーダーは文句を言いながらしぶしぶ召し上がるが贅沢をいってはいけません。テントをたたんで支度をするといざ出発。最初はアイゼンも利いたが徐々に緩んでくる。段差の大きいステップに膝をいためながらひたすら下降。標高差1600mほど休憩を入れながら降りる。雪があるとリーダーは「雪だ〜」と叫んで大喜び。早くて楽だからだ。下部1/3ほどからは夏道がでてきてアイゼンは脱ぐ。イワウチワやカタクリやスミレの大群落、樹には気の早いツツジやムシカリ、シデコブシ(多分)などが咲いて春の息吹にあふれていた。無事馬場島の有名な碑までたどりついてバンザイ三唱。重く痛い登山靴とザックをぬぐ開放感!馬場島荘で待望のお風呂に飛び込み汗と汚れを落してゆっくり体をほぐす喜び!事故もなく無事帰れて本当によかった。お世話になったリーダーと心強いメンバーに心から感謝。剱岳は個人的に特別な山なので、この目でこの足でそこへ行くことができ見ることができたことは人生でも忘れられない、すばらしい思い出になりました。次はいつ行けるだろうか。
赤谷山
赤ハゲへの稜線
白ハゲ稜線
小窓へ下降
小窓尾根上部
チンネと池ノ谷ガリー
三の窓への下降
池ノ谷ガリー
雷鳥
剣山頂
粕汁
カタクリ