大宮アルパインクラブ
DATA CONTENTS
日付 2009/5/16(土)〜(17日)
宿泊 前夜泊+1泊2日(テント)
天気 曇り→霙→風雪→雨
メンバー 横田川(L)・ちえ(2名)
歩行時間 たくさん(本文参照)
アクセス 浦和→関越→松本IC→新穂高ロープウェイ乗り場→槍平→飛騨乗越(復路はこの逆)
報告者【ちえ】
5月16日(土)
 新穂高ロープウェイ(7:00)ー白出出合(9:44)ー滝谷(10:44)−槍平(11:45)−飛騨乗越(3:10)
 最所は岳沢〜吊尾根の予定だったが、リーダーが前週いかれたのと釜トンネルの先が土砂崩れということもあり、槍ヶ岳に山域変更。1泊2日で行ける飛騨側から。前夜10:15浦和発。2時半を回る頃新穂高ロープウェイ口到着。駐車場がわからずとりあえずここで仮眠するが、明けてから移動。雨を覚悟していたが曇りだ。昼迄なんとかもっておくれと祈るようにして登り始める。白出沢出合までは大部分が林道歩き。アリスの3月ウサギのような野うさぎが道を駆けていったり、素敵な目の青年と話をしたりしながら歩く。登山道に入ってもしばらく雪はなく、滝谷の手前から雪渓のトラバースがでてくる。雪渓は汚くよごれて無残だ。いたるところにシュルントの罠がある。「ずるっ」「ずぼっ」があるとほんとに消耗してしまう。滝谷は遭難で名だたる場所。なんとなく不気味な雰囲気は気のせいだろうか。逃げるようにトットと歩いて蒲田川右股を徒渉。その先すぐの槍平あたりでぽつり、と来た。それまでは薄日も洩れていたので残念極まりない。ポンチョなどとりだしてジャミラのような風体で雪渓を登る。出だしからすると乗越しまで2000m弱の登りがとにかくダラダラと長い。最後までアイゼンはつけなかったが、やっと飛騨乗越の稜線かな?と思ってからがまたひとしきり。。。雪崩のデブリなどを越えながら稜線に近づくと急に風が強まる。折からの雪も粒の細かい硬い雪。道標のある稜線に立ったときには顔をバチバチたたかれ、あっという間の体温低下。岩の陰に隠れ、とりあえずそこをテン場と決めたリーダーがピッケルで固い雪を掘ってサイトを整えてくれる。それまで汗だくで薄着だった私は服を着る間もなくテントを張る手伝いをしていたが、ろくすっぽ働かないうちに体が大きく震えて動けなくなってしまった。荒い息をするだけで何もできない。とりあえずテントの形ができるところまで手伝ってあとは中に入れ!といわれ、ひたすら中で重しとなる。激しい風雪の中、気合で幕営を整えてくれたリーダーが雪まみれになってやっとテントの中に転がり込んでくる。動かない手で着られるだけ着込んだ私はなんとか言葉がでるまでに回復。リーダーが入れてくれたお茶で生き返る。それからビスケットを食べたり、体をほぐしたりしてそのままご飯に突入。前夜寝ていないこともあり、食べるとすぐにシュラフにもぐりこんでしまった。リーダーのテントはゴアではないので、風で間断なくあおられる度に結露が雨あられと降ってくる。何もかもがぐしょ濡れの状態でも寝られるもんだな、と感心。とにかく明日を頼みにひたすら眠る。
5月17日(日)
 テン場(7:00)−槍平(8:00)−白出沢出合(10:00)−駐車場(11:30)
 明け方もますます風雪は激しさを増していて、テントのはためく音も恐ろしい程だ。朝ごはんを済ませたリーダーが外を覗いて「これは普通行動しない天候。アタックは断念しよう」とのこと。私も強風に加え視界もないのに登るのは技術的にも不安なのでいちもにもなく同意。吹雪の中でテントを畳むが、その間もよろけるほどの風だ。これまで夏山を含めて好天山行しか経験がないので、立っていられない風というものを体験してみたかったが、いい勉強になった。穂先よ、まっていろよ〜と心で思いつつ。最初から荒天は予想していたので不満もない。今は早く温泉にはいって乾いた服を着たい、ただそれだけだった。アイゼンをつけて飛騨沢を少し下ると風がおさまってきた。槍平まで1時間。あっという間だ。このあたりまでくると雨に濡れた針葉樹がいい匂い。大樹の下で一服する。滝谷までもすぐだったが、蒲田川右股徒渉点にくると愕然。昨日より格段に水量が増して水が逆巻いているではないか。どうやって渡るんだろう・・・。ところがさすがリーダーは沢の達人。すぐ大きな木を拾って支えにし、適当な場所を見つけてさっさと渡ってしまう。実は私は徒渉が苦手。以前痛い目にあってから怖くなった。怖気づいているとザックを渡せという。ピッケルをとってリーダーの真似をして対岸に放り、ザックをおろした瞬間、重さによろけ落ちそうになった!辛うじてバランスを保ったがザックはざんぶり水に入ってしまう。必死で引き上げてなんとかリーダーに手渡し、自分も手を貸してもらいながら木を頼りに飛びわたる。やっと渡ったとほっとした時「ピッケルが・・」とリーダーの言葉。投げた後必死で気がつかなかったが、バウンドしてその後流れに持っていかれたそうだ。しばらくリーダーは雨の中探してくれたがとても見つかるものではない。とても残念だったがあきらめて下山続行。その後も数箇所雪斜面のトラバース。どんどんひどくなる雨の中、ニリンソウやエンゴサクに心和まされひたすら歩く。リーダーはコゴミを採りたくて、「そんな大きくなったの、硬くてまずいですよ」といわれても未練たらたら立ち止まる。下の方の道は流れる雨水でまるでナメ滝を歩いているかのよう。川は激流となっていた。靴の中も手袋もじゃぼじゃぼ。もう足も肩も痛い。4時間半ほどでやっと駐車場に到着。車に戻り、なんとか乾いた服に着替えて一路温泉へ。「ひらゆの森」はとてもいい温泉だった。おしゃれな民芸調の、宿泊もできる施設で、泉質もしつらえも快適でいい感じ。松の廊下並みに通路は全部畳ですもの。
 帰りは雨のせいか渋滞もなく、きわめて順調だった。(ちょっとはいいこともなくちゃ)
飛騨沢下山
撤収の朝
滝谷出合