大宮アルパインクラブ
 
DATA CONTENTS
日付 2009/5/23(土)〜24(日)
宿泊 前夜泊+1泊2日(テント)
天気 1日目:快晴
2日目:雪〜曇り〜霧雨〜雨(上高地バスターミナル到着時)
メンバー 横田川(L)・ちえ・福原(3名)
歩行時間 1日目:12時間 2日目:9時間
アクセス 浦和→関越川越IC→松本IC→上高地(復路はこの逆)
報告者【福原】
5月23日(土)
沢渡大橋(5:30)ー上高地(6:10)ー岳沢ヒュッテ跡(8:30)−天狗のコル(12:15)−ジャンダルム(15:20)−ジャンダルムとロバの耳の鞍部(16:30)
 今回初めて横田川・ちえ健脚コンビの山行に加わる。朝4時半起床、タクシーで上高地に到着、穂高にかかる雲が切れていくのを見てテンションはあがる。河童橋でお約束の記念写真を撮って岳沢へ向かう。15年前にあった小屋はなく石垣だけが過去の山行に記憶をつなげる。コル迄の天狗沢の登りはトレースもなく直登になれば簡単に体力を奪っていく。横田川さん、次にちえさん、私と、先頭を交代するがなかなか景色は変わらない。思い返せばこの山行で一番きつかったかも。途中、横田川さんのアイゼン固定ナットが抜け落ちて靴から外れてしまった。山行前にチェックする項目の一つに追加したいと思う。(・・・でも忘れそう。)コルからは岩登り、元気を取り戻す。何箇所か危険な所でロープを出してスタンディングアックスビレイ、講習参加が報われる。ロープを出す分ペースは落ちる、すると初級者2人の命を預かるリーダーのイライラは積もる。理解し申し訳ないと思いつつも、「死ぬよりは後で怒鳴られたほうがまし。」とマイペースを保つ。ちえさんはこのあたりから合わない靴に悩まされ始める、痛そうだ。明日の天気に不安を覚えたリーダーが予定のテン場をジャンダルムの手前から先へと伸ばす。雪が付いて危険なコースを回避して懸垂で降りる、支点の残置ロープは毛羽立ちもなく真新しい。2人が降りると落石の物凄い音、声が聞こえない、青くなる。支点を取って待機していた足場が崩れたらしい、危なかった。エイト環を持ってこなかった私はちえさんに借り降りて2人の元に辿り着くが足場がない。片手でエイト環をロックし、片手でホールドとスタンスを拾いバランスをキープ。浮石だらけだったこの懸垂場所は唯一ヘルメットが欲しくなった。ところで、今回エイト環を持ってこなかったのは忘れたのではなく、わざわざハーネスから外してきたのには理由がある。山行前の定例で会ったとき、リーダーの横田川さんに必要装備一覧表を渡して必要ないものを線で消してもらったのだがその中に間違えてエイト環が入ってしまったのだ。私は私で知識不足からこの山行はエイト環を必要としない山登りと思い込んでしまった。それでも念のため半マストかガルーダで降りられるように安環カラビナを3つ持参したのだが、下で待機していた横田川さんは「いったい何を考えているんだ?」と、ちえさんとあきれていたらしい。「それはないでしょうー。」と言い返す私、たじたじ横田川さん。気を取り直して先を行くリーダーの「おお、絶好のテン場だ!」の声に疑心暗鬼の初級者2人。まもなく事実だとわかり信頼回復、素晴らしい景色が広がる。前には南アルプスまで見渡せる絶景、後ろには笠が岳をはじめ北アルプス北部の山々が雲海の向こうに見渡せた、風は穏やかだ。残ったエネルギーを振り絞り氷の地面を突き崩しテントを設営、楽しい食事、今日の山行を振り返り盛り上がる。「これで本当に明日は崩れるの?」と星空を見上げる。
5月24日(日)
テン場(6:10)−奥穂高岳(7:40)−吊尾根最低コル(9:30)−前穂高岳(11:00)−奥明神沢岳沢出合(13:20)−上高地バスターミナル(15:00)−駐車場(16:00)
 昨夜は一睡もできなかった。はじめは「虫かな?」と思ったテントをこする音が「獣かな?」に変わり、すこしして外に垂れた紐がテント生地を叩く音と理解する。嬉しそうに寝息を立てる2人を羨ましく思いながら風の音を聞いていると違う音が混ざりこんできた、雪だ。朝4時半に二人を起こす、外は明るい。食事を済ませテントを畳む、無風がありがたい。着雪にテンションが下がるリーダーと足の痛いちえさん、筋肉痛のないことにホッとしている何も知らないわたし、出発。靴で苦痛のちえさん、紐をゆるめにした為何度も挫きぶつぶつ唱えながら前を歩いていく。「もういやだ!、でもまけるもんか!もういやだ!、でもまけるもんか!」と繰り返していたそうだ。奥穂高岳山頂到着、3人そろってタイマーで記念写真。どっちに降りるか悩んだ末、前穂に向かって歩き出す。辿り着いた吊尾根最低コルで休憩後「もう登りはないよ」のリーダーの声に励まされた初級者の二人は暫くしてなぜか急登の岩場を「ゼイゼイ」と息を荒げていた。前穂山頂でリーダーと硬く握手を交わす。両手でちえさんと握手するリーダーに片手の私が文句を言うと両手で握手をしてくれた。さて、ここから奥明神沢の長い雪渓を後ろ向きで下るわけだが本当に飽きた。こぼす愚痴を受け取り、励ますリーダー。岳沢出合手前から尻セードと靴スキーを楽しむ。よく整備された石の階段を降りながら「岳沢ヒュッテが近いんですか?」の質問に「とっくにすぎたよ!」とリーダー。靴で苦痛のちえさん、顔を歪めながらもタラの芽の群生を発見。するとなんだかおなかが減ってきた。無事、美味しそうな水が流れる梓川支流に辿り着く。河童橋に着くころ雨が強くなり上高地を去るときにはザーザー降りになっていた。沢渡駐車場に到着、竜地温泉に向かう。
 ラッセル時の体力、ナイフリッジや雪渓トラバースの歩行技術とスピード、ルートファインディングの正確さガイドコンテを維持する集中力の持続力、リーダーになるって大変だなー、横田川さん凄いなー、痛みに耐えながら最後まで歩ききったちえさん強いなー。お世話になりました、ありがとうございました。ご馳走様でした。また一緒に連れてってください。(妻の許す限りにおいて) 福原
穂高岳沢、天狗沢の登り
テン場より笠ヶ岳の夕日
西穂をバックに
コブ尾根の頭あたり
ジャンの手前
ジャンの通過
ジャンダルム全景
ジャンの先のテン場
馬の背リッジの通過
馬の背リッジ
雪の登行
奥穂山頂
前穂の登り
奥明神沢下降