大宮アルパインクラブ

       
DATA CONTENTS
日付 2009/9/5
宿泊 日帰り
天気 晴れ
メンバー 石倉・原・他22名(講師10名、受講者14名、合計=24名)
歩行時間
アクセス
主催:さいたま市山岳連盟・遭難対策委員会
実施日:2009年9月5日(土)
講習会場:埼玉県立長瀞げんきプラザ近くの荒川
講師:埼玉県警察 山岳救助隊(隊員:10名)
受講者:14名(さいたま市山岳連盟の所属会員、救助隊から15名ぐらいまでとの要請があった)
講習内容:沢での危険性と安全対策(危険回避、救助)
【講習内容】
1.埼玉県内での遭難状況説明
  平成21年度は、9月1日時点で33件38名(死者1、負傷16、無事20、行方不明1)で、原因のトップは道迷い。
  沢での事故原因としては、急流に対する知識不足、バックアップ体制(事故発生時の救出するための体制)不備、低体温症、装備不足(ザイル未装備)、滑落(登攀時にザイル未使用)などがあるが、急流に対する知識不足による事故が最も多い。
2.急流の特性に関する説明
  川や沢では、その時々の流れの状態を観察し急流がどのような状態であるかを理解して行動する必要がある。
(1)フットエントラップメント
流された時に足が川底の岩の隙間や流木などに挟まり、流れの水圧で身動きがとれなくなること。脱出できなくなることがあり危険。
(2)ボディトラップメント
流された時に体が大きな岩などに張り付いて、流れの水圧で身動きがとれなくなること。脱出できなくなることがあり危険。
(3)アンダーカットロック
  流れの当たる岩や岩壁の水面の下がえぐれている場所で、岩の下に吸い込まれる流れがある。吸いこまれると脱出できないことがあり危険。
  流れが流れの中の岩に当たって、岩の上を流れが行く、もしくは岩にせりあがって左右に流れが分かれていく場合(クッションウェーブ)は、岩の下に吸い込まれることは少ない。
(4)ストレーナー
  流れの中に倒木などでできた障害物で、流れは通すが人間は通さないで張り付いてしまう危険な場所。
(5)エディ
  流れが反転しているところで、川を泳いで対岸へ渡るときに流心を通過してエディに入ると流れが無くなり上陸しやすい。
(6)テンション・ダイヤゴナル
  流されてくる人を流れに対して斜めに張ったロープで救助する方法。流れに押されて下流側に張られたロープの方に体が移動して川岸に近づくことができる。
  流れに対して直角に張ったロープでは、流された人がロープを掴んでも水圧でロープがV字状になり、ロープを伝って岸に近づくことが困難となり危険。

3.実技講習
(1)フローティングポジション
 流された場合の安全な姿勢のこと。ラッコスタイルで下流に足を向け、足をやや開いた状態で水面近くまで持ち上げた姿勢で回転しないようにコントロールしながら流されていく。足を持ち上げることで、フットエントラップメントを回避できる。
(2)スローバックによる救助
 スローバックは水に浮くロープが収納されたバックで、バックよりロープの端を引き出して片方の手に持ち、バックの重さを利用して要救助者へ向けて投げる。
 @流された人の上にロープが落ちるように投げる。
 A要救助者はロープを胸の位置で掴んで仰向けで足を広げて回転しないようにバランスを取る。
 B要救助者はロープを救助者側と反対側の肩を通すように保持する。腕を伸ばさずに胸の位置でロープを掴んでいることがポイント。
 Cこのポジションでいると、要救助者は流れに押されて徐々に流心から外れ救助者側の岸へ近づいていく。
(3)渡渉
 @大人数での渡渉方法
 上流に向け、ボウリングのピンのような配置で大柄の人から順番に並び(1,2,3,4,5人と並ぶ)、前と横の人を掴んで体制を整える。
 先頭は肩より長い棒を前に突いてバランスをとりながら、先頭が上流を向いた状態で流れに対して直角に全員がピラミッド状態を崩さないように横移動して渡渉を行う。
 後に位置する人ほど流れの圧力を受けなくなりラクに移動できる。
 遭難者を救助する際に要救助者の上流に位置して流れを弱くする祭にも利用される。
 A少人数での渡渉方法
 3人が肩を組んで円形になってお互いを支えながら渡渉を行う。流れが強い場合は、自然にゆっくりと回転しながらの渡渉となる。
 2人の場合は向かい合ってお互いのザックのショルダーべルトを掴む方法や横に並んでお互いのザックのショルダーべルトを掴む方法がある。
(4)対岸への泳いで渡る
 対岸へ泳いで渡る場合は、流心を抜けた後に岸に上がりやすいように岸の近くに流れの弱いところ(エディ)がある場所を選ぶ。
 流れの強いところでは、進む方向へ真っ直ぐに泳ぐと下流に流されてしまうので、上流に向けて斜めに泳ぐことで横移動となる(フェリーグライド)。
 流れのある川では、プールの静水で泳ぐ場合とは異なり思うように泳ぐことはできない。流れが強ければ体力を消耗し溺れてしまうので、安全のためにライフジャケットが必要である。
(5)遡行時の危険回避とバックアップ体制
 パーティで遡行する場合は急流の特性をよく理解して、トップ、セカンド、ラストを決め、弱者に対してはお助け縄などで安全な位置まで確実なフォローを行うことが事故を防ぐことにつながる。大丈夫だろうと先にいったら後続が落ちて流されたり、岩にぶつかって怪我をすることがあることを考えて行動する。
 後続者は、前の人が流されたときに直ぐにロープを投げられるように腰にぶら下げるなどして準備しておく。ワンタッチで外せて直ぐに投げられるスローバックは迅速な対応ができる。
(6)ロープによるバックアップ
 急流の渡渉で流される危険がある場合のバックアップ方法として、流れに対して斜めに張ったロープで流されてくる人を救助するテンション・ダイヤゴナルの実習を行った。流されてくる人を流れに対して斜めに張ったロープで救助する方法で、ロープをわきの下の入れて掴むと流れに押されて下流側に張られたロープの方に体が移動して川岸に近づくことができる。

4.まとめ
 さいたま市山岳連盟は年一回、埼玉県警察山岳救助隊に講師をお願いして秩父で遭難対策講習会を行っている。今年は沢・水をテーマに行った。埼玉県の沢の遭難事故にあたっている救助隊の方にそのノウハウを教えていただく企画であった。
 当日は天気にも恵まれ最高のコンデションの下行われ、皆全身ずぶ濡れになりながら真剣に講習に取り組んだ。この講習会で学んだことを今後活用して、より安全な登山を行って行きたい。
 最後に講師をしていただいた埼玉県山岳救助隊の皆様ありがとうございました。(このレポートは、さいたま市山岳連盟・遭難対策委員長の報告を一部使わせていただきました)

山岳救助隊の紹介
徒渉の講義
全員ライフジャケットを着けての講習
急流で流されたら足を上げて
ロープを使っての救助訓練 1
へつりの講習
原さん急流を泳いで対岸へ
ロープを使って救助訓練 2
3人による徒
遡行訓練
大人数による徒
参加者の写真