大宮アルパインクラブ
DATA CONTENTS
日付 2009/10/14
宿泊
天気 曇りのち晴れ
メンバー 村上、菅野、福原
歩行時間
アクセス
報告者【菅野・福原】
前回の「気持ち切れ敗退」があっての、今回。ピーカンの中、取り付きで引き返すようなことはしたくない。あの取り付き近くから眺めた衝立岩に魅せられた。いつか、衝立のでっかい壁を登るぞと心に決め、まずははじめの一歩となる今日の変形チムニーである。天気はまずまず。予報では曇りのち晴れである。最初は暗雲がどっしりと一の倉にかぶさっていたが、登攀途中で少しずつ太陽が顔を出してくれた。早朝ヘッテン点けながら出合いまで歩く。まだ、4時くらいなのに、一の倉を見上げると登攀者の明かりが点々としている。みんな考えることは一緒だ。それを考えれば、前回は悪天の予報の中での思わぬ快晴だっただけに、人も少なかった。返す返すも、、、、何も言うまい。 前回の予習あって取り付きまでは問題ない。いや、私が楽して、残置ロープを触りながらスラブを登っていくと、すかさず村上さんから、できる触らぬように、と一喝された。すみません、、。テールリッジ下部は、前回はからからになっていた日が続いていたせいか、アプローチの滝を直接のぼっていくことができたが、今回はそうはいかず、左側から高捲いて、クライムダウンするというルートをとった。 取り付きから、6ピッチは私がリードする。前の屏風と同じメンバーでのパーティなので、気は楽だ。お互いに見慣れたガチャだ。やはり、ロープをつないだ分だけ互いの気心もしれているため、不安要素はその分少なくなる。 ルート図を見ながら、登るルートを確かめる。チムニーの位置を下から見て、あれを目指すことを確認する。初めてのルートはいつものことだが、ルート図でよく確認しないとわからない。さらに確認しても登っている間にわからなくなる。なんといっても、この岩壁の概念を把握することが大切なようだ。ことに、傾斜が寝ているようなところだとことさらわからない。衝立では残地を追いかけると登っていけたが、残地に頼るばかりの登りではさっぱりルートファインディングの力はつかないだろう。今回もリードしている中で、何度かルートを見失いそうになった。下からの助言や引き返すことで見つけられたが、まだまだルートを見る目は養う余地はありそうだ。今後の課題か。 1ピッチ目。比較的易しいフェース。ルート図で見ていたとおりにうまくピッチが切れず、慎重にロープを出していたら、ぎりぎりのところで新しい支点を見つけた。下のビレイポイントもぴかぴかだったから、同じからが時間短縮のため、50mいっぱいのところで打ったのだろう。 2ピッチ目。左へのカンテを登る。岩がもろいのが気になる。ところどころ岩がぬれているため、足おきには非常に神経質になる。ここも、40mほどロープを出す。 3ピッチ目。ルート図では、チムニーまでもう1ピッチあるはずだが、このピッチでチムニー直下まできた。50mぎりぎりだった。左のフェースから登る。岩濡れともろさとでナーバスになる。 4ピッチ目。今日のメインディッシュのチムニーである。とにかく、すべる。べちょべちょである。緊張感いっぱいで登っていたため、落ちるような心配はしなかったが、怖かった。絶対落ちてはならないので、ところどころはパワークライミングに頼らざるを得ない。登り始めは快適だ。しょっぱなでの支点がなかったので、そこにハーケンを打つ。このハーケン、回収されなかった、、お別れです。少し登るとバックアンドフットでずるずると登っていく。残地ハーケンはたくさん打ってあるので、信用できそうなところに贅沢にランナーをとっていく。そして、核心で行き詰まる。目の前を壁でとうせんぼされて、あがれない。あと一歩なのだが。一度体勢を大きく変えて、足を大きく開いて身体のバランスを保ち、良い体勢で登れるようなホールドを探す。ガバはないから、しょうがなく細かいホールドで、おそるおそる体重を移し変えながら核心をクリア。大きく息を吸った。とりあえず、そこでピッチをきる。 5ピッチ目。多少下り気味のトラバース。見ると中央カンテルートからパーティが上がってくる。この先で合流するので、足取りを急ぐ。 6ピッチ目。ルンゼ〜フェースを登る。下からの追い上げが気になり、急いで登る。支点が少ない上、ピッチをきるところが見当たらなく不安になる。それほど経験がないうえ、初めての岩場であれば、ちょっとしたことでも不安要素になる。支点が少ないとルートを間違えているのではとか、不注意で見失っているのではとか。そして、フォローの村上さんから駄目だしされるのではという不安!ここでもぎりぎり50mのところで、しかも、ぼろっぼろの腐れハーケン。一本打とうと思ったが、そういえば、ハーケン、、、、。チムニーにくれてやったのであった。ここで、福原さんとリード交代。(記録:菅野)
6ピッチ目途中から菅野さんからリードを交代して快適に攀じる。いくらも行かないうちに7ピッチ目のビレイ点到着、このテラス上の垂壁は核心部なのでランナーを2本とる。A0でガバホールドを掴んだとき思い出した。クライミングジムでお世話になっているJECCの大前さんから「念のためにデイジーチェーンでセルフをかけておけば、上にガバがあるからフリーでいけますよ。」なるほど納得、しかし気が付いたときには通り抜けてしまっていた、残念。とにかくハング左のコーナークラック手前でビレイ、後続を呼ぶ。ビレイ点に到着してから後続にロープを渡し、再びリードで登りだすまでに時間が掛かりすぎて遅くなってしまう。そのため後から来たパーティーが追いついた為、先に行かせることになった。どうやら私たちとはビレイポイントが違う為、この1ピッチ先でフォローのビレイをするらしい。攀じ始めていたが戻って待機、さっさと行ってもらうことにする。ところがなかなかフォローの人が上がってこない、改めて「ビレイシステムを早く作られるようにならなければ!ルートファインディング力を身につけなければ!フリーに行かなくては!」そう思うのであった。8ピッチ目浮石だらけ、落石に注意してなるべく力を使わずバランスで攀じるように意識する。9ピッチ目V級のトラバースが怖い、ぬるぬるのずるずる天然ウォータースライダー。ザイルが重く、動きを止めて軽く片足を滑らせる。ここでバランスを崩したら止まらないだろう。烏帽子岩の基部にむかって直上するも、「ロープないよー!」の声にルートから外れていることに気づき笹薮をクライムダウン、丁度ビレイポイントに降り立つ。10ピッチ目、烏帽子岩下のロープが垂れているのを発見直上するが冬用のコースらしくまたしても笹薮を烏帽子の肩へとクライムダウン、終了点到着。ここから村上さんリードで一の倉岳稜線に向かうが途中脆い岩場でザイルを出す。ロープが落石を生む、集中してそれを避ける。ザイルをザックにしまい笹薮を歩くが、横腹が痛い。「横隔膜が震えるからだそうですよ」と菅野さんの説明に「それで?」と私。一ノ倉岳山頂到着、3人で握手を交わす。ついでにお約束の{村上さんとの走らない契約}も交わす。横腹が痛くて村上さんのペースに着いていけない私に、仕方なく2人はペースを落とすが肩の小屋に来たときには我慢の限界が来たらしい、「どうか私にザイルを持たせてください。」と村上さん。ついでにハーネスも村上ザックに治められた私の腹痛も治まった。しかし村上さんにとってザイルはブレーキにはならず、駆け下りる速度は2倍になっていく。「村上さん、走らないって言いませんでしたか?」と私、「じゃあ走ろうか?」と村上さん。更なるスピードアップに「福原さんが油を注ぐからー。」と菅野さん。・・・ハ・ハ・ハ。濡れた木の根や石に何度かコケながらも必死に村上さんの後を追いかけるが、なかなか車道に出ない。「鉄塔が出てきたらもうすぐだよ。」の村上さんの声に「もうすぐって何分なんだろう?」と私。暫らく頑張ってやっと鉄塔確認、「あとちょいだよ。」の村上さんの声に「あとチョイって何秒だろう?」と私。やっと通り過ぎる車を発見して最後のダッシュ、足はよれよれ膝はガクガクながらもヘッドランプ装着前に無事下山。駐車場に着くと菅野さんと私はコーラ、カロリーを気にする村上さんはオロナミンCで乾杯。「何でこれだかわかる?」と村上さん、「いいえ?」と2人。「それはねー、元気はつらつ!リポビタンD!!」(記録:福原)
No.1
No.2
No.3
No.4 衝立の基部
No.5 1ピッチ目、菅野リード
No.6
No.7
No.8
No.9
No.10
No.11 チムニーの中
No.12
No.14 4畳半テラス上の核心
No.15
No.16
No.17 喜びの頂上