Omiya Alpine Club
山行報告
DATA CONTENTS
日付 2010/7 /24 ~25
宿泊 ツエルト
天気
メンバー L=村上、 chie
歩行時間
アクセス 7月23日夜発〜7月25日下山帰宅(ツェルトビバーク1泊)
ルート
広河原〜大樺沢2俣左〜バットレス沢〜ピラミッドフェースから4尾根〜頂上〜八本歯のコル〜大樺沢〜広河原
Report by 【chie】
<コースタイム>
【23日】
 9:20浦和発〜12:30芦安市営P着(第3P:数台あいている状態)13:00就寝
【24日】
5:10始発バスにて6:11広河原着〜(準備)〜6:30スタート〜8:00大樺沢二俣着〜9:15バットレス沢経由4尾根取り付き点〜10:20ピラミッドフェース取り付き〜14:00第4尾根合流点〜大休止1時間〜15:00第4尾根(途中から)スタート〜(10:30)マッチ箱〜18:00枯れ木テラス経由チムニーで終了〜19:00頂上
【25日】
5:44頂上発〜八本歯のコル経由〜8:30広河原着〜9:30芦安P着〜14:00帰宅
去年、バットレスにいけたらいいね、という話を村上さんから聞いて以来、いつかいきたいと思っていた。。
 芦安には早めに着いたものの、夜通し車の往来の上、3時には係員が来て大声で交通整理。とても寝ていられたものではない・・・。結局3時間睡眠。4時には人々は準備を始め、ワサワサと騒がしい中バス待ちで並び始める。係員の話によると、始発は16台とのこと。唖然。しかしほとんどの人は一般ルートの客のようで、取り付までの間、抜いたり会ったりしたクライマーは3パーティしかいなかった。
 大樺沢2俣まで1時間半、左にルートをとり、残った雪渓も使う。この頃から重荷の村上さんは強い日差しできつそう。後で聞けば両足が痙攣していたそうだ。二俣から1時間弱で基部。ただし、詰める予定のcまたはd沢でなく結果的にバットレス沢だったらしいので、これまた急な雪渓を2本トラバースしてピラミッドフェース基部まで。雪渓が結構厳しく、持ち上げた12本アイゼンが活躍。 そうこうしながらやっと登攀準備にかかる。混んでいると覚悟したのに、なんと貸し切り。ちょうど十字クラックを降りてきたらしいパーティがユマールの練習をしていて言葉を交わしたところ、中央稜は見ていてもガラガラ音をたてて落石が続き、かなり荒れているとの情報。もともと継続は難しいかも、と思っていたので、ここであっさり、本日は4尾根で終了という暗黙の了解。

 1ピッチ目 V 浅い凹角(リード:M)
dガリー大滝と十字クラックの間の浅い凹角。するっと登る。わたしはずっとdガリー大滝が1ピッチ目だと勘違いしていたが、帰ってきてから正規ルートがこの凹角だとわかった。

 2ピッチ目 U 草付をトラバース(リード:M)
どの記録をみても崩壊したハングの下オリジナルルートは悪いので、左草付を大きく回りこむルートとかかれているが、明瞭でないため、村上さんがリード。10mほどの短いトラバース。

 3ピッチ目 W+ オリジナルルート(リード:C)
ここはVなのでリードせよと御下命あり。でも草付でルートがわからない不安。これは去年の中央カンテ2ピッチ目のリードと同じく、見渡してもピンが探せず、迷子になったような途方にくれた気分。やっとみつけた一枚岩のピンにとりあえずランナー。さらに見渡すと右方向バンドになって踏み後あり。ロープの屈曲が気になりつつも、素直に従って少し行くと高さ3mほどの横につづくスラブにピン発見。これだ!と思い登るのだが渋い。これVじゃない!と思いながらA0駆使してなんとか越える。次もレッジのような場所で、やっとリングの支点発見。ここでギブアップかとも思ったが、もうちょっといけそうだと思い直し、続投。これまたかなり渋く、なんとか次のバンドにビレイ点をみつけビレイ。フォローの村上さんもから「これ難しくない?えらかったね」とのお褒めの言葉をいただく。どうやら今では悪いとされ、登られていないオリジナルルートのようだ。こうして崩壊したハングまでたどりつく。本来は、私が切ったところより更に右5m程行ったところにもビレイ点で、こちらが適当だった模様。なのでさらに私が右上してビレイ点を作る。ピッチは切ったが実質は前のピッチに含めても良いと思う。ここまでは本当にルートがはっきりせず、わかりにくく、精神的に悪い。

 4ピッチ目 V クラック+フェース 、W クラック+フェースを左上 (リード:M)
ここはXなので村上さんにお任せ。「日本の岩場」によると25mと30m2ピッチになっているが、そんなにない。後でわかったのだがこの二つのピッチをつないでワンピッチとした模様。面白いピッチだった。
ところがです。ここで村上さんのリード1ピン目がでたところで、右方向ブッシュから突然「やっほ〜ぅ♪」の声。なに?!と思ったらなんとそこには懐かしい福原さんの顔がひょっこり。え〜〜〜〜!なんでここにいるの!今頃!と思ったら、実はほとんど同時に到着して4尾根に取り付いていたらしい。私はてっきりこの日はビバークのみで、翌日日曜に4尾根かと思っていたので、本当にびっくりした。
   5ピッチ目 W+ 逆層のフェース (リード:C)
ヒロケンさんのアルパインクライミングには第一の核心とある。私にはムリと思って尻込みしたが、その後のXのピッチを考えると私が行ったほうがよさそう。村上さんも「楽しんで行ってみればいいから」と。じゃいってみるかとスタートする。案の定、3歩ほど上がったところ、右側の壁に足を突っ張ってランナーを取っている時にスリップ。60cmほどずり落ちて、ちょうど1ピンめのハーケンに足が乗る。やっぱりムリだわとあきらめかけてもう一度チャレンジ。必死でがんばって、ここもA0でなんとかリード。これをフリーで行けるようにならんとなぁと思う・・・

  6ピッチ目 X フェースを左上、垂直のコーナークラック(リード:M)
ここが第二の核心といわれるピッチ。いってみるとやっぱりクラックが垂直よりややかぶりぐらいに思える。苦手。あれこれやってみるがどうしても1歩が上がれない。励まされてなんとか動きを思いつき上がれた。もちろんA0。そこだけクリアすればあとは登れた。

 7ピッチ目 U フェースを右上 (リード:C)
Uだから、ということもあり順番的に私が行く。でもこれ、絶対Uじゃない!「日本の岩場」はおかしい!と二人で言いつつ、このピッチを終了。村上さんの見立てではV+。私はW−といってもいいと思う!
これで4尾根との合流点の広いテラスに出る。ここで1時間の大休止。朝のアプローチかっとばしの影響がそろそろ出始める。軽量化のため、水分も極限まで削って500mlしかもっていないので、のどが渇くがかなりセーブしている。これも辛いところ。でも目の前には鳳凰三山が白い地肌を覗かせながら優雅に広がっているし、天気はいいし、昼寝をしたくなるほど幸せな気分だ。おしゃべりをしながらおいしい景色を楽しむ。

  8ピッチ目 V 白いクラック (リード:M)
そろそろ行かないと遅くなるということで3時にスタート。易しいクラックとのことだが、クラックは経験のない私には、ねじ込んだ足が痛い。それでもホールドが豊富なのとピラミッドフェースに比べたらほんとに楽に感じる。それに人気の4尾根だけあって、ピンにも真新しいペツルがでてくる。さすが。ピラミッドフェースはボロボロぐらぐらのも結構多かった。

  9ピッチ目 U?トラバース+草付 (リード:C)
これは「日本の岩場」によれば本来8ピッチ目の白いクラックに含まれるようだ。やさしいトラバースを右へ、その上は普通に歩く感じ。ハイマツでとりながらビレイ点へ。

 10ピッチ目 V フェースから第1コルを経て第2コルへ (リード:M)
ここは、Xの垂壁のあるピッチのつもりだったのだが、どうみてもXの垂壁なんかないよ?とのこと。たしかに歩くほど易しい。やっぱり「日本の岩場」は変だよね、などと思いつつ・・・

 11ピッチ目 X〜V 三角形の垂壁からリッジ (リード:C)
順番では私のピッチ。だけど、もしかして、この先にそのXがでてくるんでない?といいながらもとにかく行く。出てすぐに目の前に現れた三角形の垂壁。こ・れ・だ・ぁ〜・・・・
でもいけそうな気がする。A0なら3mくらいなんとかなりそう、とチャレンジ。小さい凹角にピンもべた打ち。ランナーをとって2手目へ。でもやっぱり渋い。リーチが短いがゆえに、一発で垂壁の頂上のホールドが取れない。しばらくあれこれやってみて、一旦はあきらめかけた最後のトライでなんとか体を上げることができる。もうちょっと、と踏ん張ってついに越えた。うれしい。Xを自力でいけた。しかし更に残りのルートを処理しなければならない。この先はリッジで、切れた左側にはDガリー奥壁を登っている2パーティがすぐそこに見える。フリクションが効くとはいえ、ランナーが取れないまま5〜6mフリーソロになるこの部分は、未熟者にはやっぱり緊張の一瞬。
 フォローで上がってきた村上さんにねぎらわれ、でも垂壁は1歩目さえ立ち込めば、右から回り込んで易しいよとのお言葉。うーん、余裕ナシでした。マッチ箱だよ、と教えられ、懸垂支点にロープをセットしてくれたので後手で降りる。

 12ピッチ目 W〜X コーナーからリッジ上のクラック (リード:M)
マッチ箱の上からみたら、「こんなスラブどこを登るんだろう?」と思えるほどツルツルに見えたけれど、実際に登ってみると快適なクライミング。本来3ピッチで終了点まで行くところのようだが、2ピッチにするため、カンテの途中までロープが伸びる。

 13ピッチ目 X〜W カンテから枯れ木テラスを経てチムニー (リード:C)
いよいよ最後のピッチ。時間は5時半近い。最後のチムニーがあるけど大丈夫?ときかれる。ここはやりたくてやらせてくださいとお願いしたピッチ。だってチムニーは大好きで自信がある。なるべく長くランナーをとれと指示を受け、1ピン飛ばしたのをクライムダウンして取り直したりしながら、フリクション抜群のカンテを登り、有名な枯れ木テラスへ。登れなかった中央稜に挨拶をして、チムニー方面へナイフの刃先のような部分を渡る。ここは3〜4mだけど、まるで肝試しのようないやらしい部分。シューズの裏が切れそうなくらい薄い刃の岩だ。ほんとにルートかしら、と思うほど。でもホントです。ちゃんとチムニーには残置支点がたくさんある。この部分は全ルートで一番ワクワクして一番楽しかった。抜けたところでビレイ。屈曲の為、めちゃくちゃ重いロープを、渾身の力を込めて上げながら村上さんを待つ。「よくこんなチムニー、リードするね、俺は嫌い」といいながら上がってきた村上さんを迎えて6時。ここで実質のルート終了。あとはビレイもせず、ロープをひきずった村上さんがバルジから草付を歩いて終了点のテラスへ。もうヘトヘトの疲労困憊。のろのろとギアをしまって靴を履き替え、痛む足をさすりながら、荷造り。そして、薄暮になりかけた空の下を頂上へと向かう。空気が薄いせいもあるのだろうが、とにかく疲れて足がでない。カタツムリのようにのろのろと歩く。両側には、花束のように、美しく可憐な花たちの群れが風にそよぐ。がんばったクライマーしか見ることのできないという、このお花畑を写真に収めることができなくて本当に残念だった。カメラの重ささえ、未熟者には禁物なのだった。
 この時期は沢のほうが多く、高山植物が咲き乱れる山にはあまり行ったことがないので、こんなにたくさんのかわいい花たちが咲いているのをみるのはほとんど初めてだ。エーデルワイスの仲間と思しきもの、ニリンソウ、スミレの種類、オダマキ、チドリグサ、その他、まだ名前をちゃんとしらない花たちは本当にきれいだった。

 村上さんの記憶を頼りに、頂上直下にスペースをみつけ、ビバークの準備。疲れすぎて食欲もない。村上さんが上げてくれたチューハイを分け合って祝杯。スープを2杯のんだらもう目を開けていられない。速攻で眠る支度。空は14夜の月と雲で星はいまひとつ。でももう、眠い・・・。夜中目を覚ましたら、満天の星だった。そして4時前から空の一角が朱に変わり始め、1時間ほどかけてご来光。すばらしかった。雲海には富士山のこの上ない均整のとれたシルエットが、堂々とそびえている。こんなに完璧な富士山の姿は見たことがない。息をするのも忘れて見とれる。
 登山客の人々も盛んにカメラのシャッターを切っていて、にぎやかになった。さくっと朝ごはんを食べて片付け、5:44にはスタート。バットレスに響く、本日のパーティのコールをききながら八本歯のコルを経て大樺沢を下る。雪渓がけっこう緊張したが、飛ばしまくって8時半には広河原。偶然にもまた横田川・福原パーティと一緒になり、ご飯とお風呂を一緒にして帰宅。r最高の天気と渋滞のない岩場&高速で充実の山行でした。

雲海のご来光

ピラミッドフェース〜第4尾根
逆層のフェースリード中

ピラミッドフェース〜第4尾根
大樺沢をバックに登攀中