Omiya Alpine Club | |||||||||||||||
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Report by 【眞野】 Introduction OAC入会当初から会長に春の剱岳・源次郎尾根はいいよ〜!と何度も聞いていた。当HPの今のトップページも2008年の源次郎尾根の山行写真を使っている。それから剱岳を何度想像したことだろう。昨年の夏合宿でも計画されて参加したのであるが、間近に剣岳を見たものの前日からの雨で撤退を余儀なくされた。昨年より2011年の春合宿は剱岳・源次郎尾根へという事を聞いていたので、是非行ってみたいと思っていた。仕事柄、なかなか山行に参加出来ずにストレスが溜まっていた。無雪期ではなく残雪期。谷川岳・西黒尾根は準備トレーニング山行ということで参加し、山をしばらく歩いていなかった体に刺激を与えて私にとってOACでの最初で最後の剱岳源次郎尾根・残雪バリエーション山行に備えた。 3日(火) 前日の天気予報では悪くない。震災後の大型連休は、自粛モードは完全に雪解けしているのかもしれない。観光客も登山客もスキーヤーやボーダーも待っていたかのように集まっていた。駐車場は、関東、関西、中国地方からのマイカーでいっぱい。我々も到着後のタイミングがよく、いい場所に駐車でき、テントと車に仮眠した。朝6時に起床し、食事を済ませ、ターミナルの駅に行くとすでに室堂へ出発する人で溢れていた。登りは室堂ターミナルへの直通バスがあるということでチケットを購入。5日間有効で往復¥3,780だった。10kg以上の荷物なので各自¥300払ってバスに乗り込んだ。 |
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出発前の室堂行きバス停 |
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観光客7:登山者3くらいだろうか |
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ケーブルカーだと美女平までは直線1kmで時間は掛からないが、バスで行くには山腹を登り約7kmと遠回りをするので時間が掛かる。美女平を過ぎてしばらく行くとまだまだ残雪を纏うぶな坂、ぶな平を高原へと向かってゆく。滝見台で落差日本一と言われる“称名滝”を見た跡は道の両脇にもっと雪が多くなってくる。周りの景色が見渡せるようになり山々が見えてくる。室堂の手前に“雪の大谷”を通過する。今年は、高さは例年より多めで17mだそうだ。しかし、今までの最高は25mとバスの運転手のアナウンス。17mで“凄い!”と感じるのだから25mともなると巨大クレバスにでも落ちて空を見上げるほどなのかなあと考えてしまう。やはり立山は日本一の豪雪地帯である事をしみじみと感じる。とにかく5月でも雪、雪、雪なのだ。 | |||||||||||||||
雪の大谷手前(まだここは10mくらい) |
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室堂のターミナルは、これから向かう登山者、スキーヤー、ボーダー、そして観光客でさらに人が溢れかえっていた。我々は、すぐに出発した。まずは、雷鳥平を目指そう。残雪の多さを実感する周りの雪の多さに圧倒される。下界はもう初夏の様相だというのに一面真っ白だ。天気がよいので照り返しが凄い。少し歩いただけで暑くなる。地獄谷、水面すらまだ見えない凍りつくみくりが池を過ぎたら、雷鳥平が見えてきた。スキーヤーが軽快に滑降してゆく中、我々は色とりどりに張られたテント場へ下って行った。 | |||||||||||||||
室堂ターミナルのホテル立山の前 |
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みくりが池の手前平坦で広い |
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雷鳥平が見えてくると綺麗に並んだ色とりどりのテントが鮮やかに見える。左奥には奥大日岳、右には真砂岳や雄山が日差しに照らされて眩しく目に映る。山頂から描かれたシュプールは、スキーヤーが気持ちよく雷鳥平へと滑って行った跡だ。いつかは私も挑戦してみたいのだが、叶うことがあるかどうかは未知。 | |||||||||||||||
色とりどりの雷鳥平のテント。別山乗越へ登る登山者が蟻のように繋がっている |
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昨年の夏に来た時は、道も当然の事ながら、周りの自然を痛める事が無いように制限され決まった歩道を歩かなければならない。しかし、まだ雪が3m以上もあるこの時期は、どこでも自由に歩く事が出来る。クレバスなどには気をつけなければならないが、しまった雪の上は軽快に歩く事が出来る。 | |||||||||||||||
多くのテントが並ぶ雷鳥平 |
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別山乗越に向かう前に小休止 |
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上から見た雷鳥平のテント場はそんなに数は多くないと思ったが、意外にも多いテントだ。スキーヤーやボーダーもかなりの数になるだろう。雷鳥平で小休止を取る。ここは、奥大日岳、雄山、真砂岳、別山乗越、別山、剱岳への拠点となるところだ。山頂付近の岩場を除けば全て真っ白な雪。太陽の光に屈折した光る雪面も美しい。山スキーをやる石倉さんや横田さんも滑りたくてうずうずしているに違いない。 | |||||||||||||||
ボーダー、スキーヤーも登ってゆく(バックは奥大日岳) |
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室堂乗越〜奥大日岳稜線(雪庇が大きい) |
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雷鳥坂中腹(既に雷鳥平のテントは点となる) |
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別山乗越への稜線直下 |
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稜線から剱御前小屋へ |
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さあ、ここから別山乗越への稜線を目指そう。先程、雷鳥平から見た蟻の行列のように見えた登山者の列の中に入るとやはりそこはスケールの大きさを感じる。歩いてもなかなか進んでくれないように思える。体力不足の私は、徐々に遅れてくる。そこは周りの景色を見ながら疲れを癒し、水分を取り登って行った。乗越の稜線手前まで来ると曇ってきて温度も一気に下がってくる。後ろには瀬下さん、前にはもう着いたであろう4名が見えない。やはり稜線に出るとまた違う感覚で気持ちがよい。でも下がる気温で長袖のTシャツのままでは寒くなってきた。既に下山する人も多く、挨拶をしながら皆、笑顔で下りて行く。やっと剱御前小屋だ。 | |||||||||||||||
別山乗越から望む室堂ターミナル、奥の龍王岳、一ノ越 |
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剱御前小屋で待つ3人 |
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私は、剱御前小屋に20分遅れで到着した。共同の荷物のテント一式と食料を交換して、私は小休止をする。乗越ではさらに気温は下がっていた。やっと剱岳の全容を見ることが出来た。例年よりも雪は多いそうだ。確かに剱沢は深い雪であろう。スキーヤーやボーダーは見える範囲で楽しむ人や剱沢雪渓を真砂沢へと滑降するであろう人が沢山いた。剱沢雪渓は日本三大雪渓の一つ、昨年は白馬大雪渓を歩いたが、またここも大雪渓である。気持ちの良い巨大カールである。スキーヤーが魅力にとりつかれるのも無理はない。 | |||||||||||||||
剱御前小屋からの剱岳全容と右奥は後立山連峰 |
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剱沢テント場からの剱岳、明日行く源次郎尾根 |
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テント設営のための雪壁作り |
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剱御前小屋から剱岳の全容を見ることは出来たが、今一天気は曇り空である。心配してもしょうがない。瀬下さんも追いついたので剱沢雪渓を幕営地へと下ってゆこう。テント場は、思ったより人は少なかった。既に到着した石倉さん、井上さん、川村さん、横田さんはテント設営の為の雪壁作りをしてくれていた。これが意外と大変。スノーソーがあればすぐに早く解決する事に気付いた。スコップで雪を切るのは大変なのだ。終わったら4人用テントを張り一服した。まだ早いので少し昼寝をする。夕食はラーメンと餅。まずは、綺麗な雪を調達してコッヘルに雪と指し水を入れて水を作る。 | |||||||||||||||
4日(水) しかし、山は本当にわからない。期待ばかりして必ず大丈夫だと思っていたが、前日の夕方に雪が降り、少しだが積もっていた。当日の朝も天候は怪しかった。風もある。剣岳の姿は見えない。一度は断念との判断もあり、あきらめかけていたが、平蔵谷出合までは行ってみる事になった。あきらめモードで剱沢雪渓を下りていったが、少しずつ雲の境目が上にずれて行っている。時々スキーヤーが気持ちよさそうに雪渓を滑降して行く。 |
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4日出発前、天候は微妙。平蔵谷出合までまずは偵察へ |
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剱沢雪渓を優雅に下る(源次郎尾根は見ての通りT峰も見えず) |
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急速に霧が晴れてきそうな気配を感じながら |
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驚愕の平蔵谷出合の巨大デブリ |
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高さ約7m、幅は70m以上はあるだろうか |
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デブリを越えて取り付きまで行く |
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比較的新しいデブリ、巻き込まれたらまず助からない |
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平蔵谷出合に近づいてくると見たことのない巨大な雪崩の跡(デブリ)が見えてきた。いったいどれだけの大きさなのか、一目ではわからずよく見るとデブリの近くで何人かが休憩している。下りていってもなかなかデブリには近づかない。直前に行ってみるとかなりの大きさに驚愕する。こんな雪崩れに巻き込まれたら、まず助からない。高さは7.8m幅は70mはあるに違いない。いつ発生したかは定かではないが、新しいに違いないだろうと思われる。デブリの上を乗り越えて取り付きへ到着した。しばらくは様子を見ていたが、天候も悪くはなく、瀬下さんは平蔵谷へ遡行し、石倉さん、井上さん、川村さん、横田さん、私5名は源次郎尾根アタックとの判断で決定した。 | |||||||||||||||
取り付きに到着してしばらく様子見。アタック決定後の準備中! 7:20出発 |
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源次郎尾根の稜線からのルート |
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稜線まではルンゼをつめる |
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斜度40度はありそうな登り |
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稜線まではあと一息 |
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稜線直前・・・笑顔が |
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尾根稜線到着 |
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7:20に登攀開始、ルンゼの雪渓をつめて行く。最初は当たり前だが緩やかな登り、高度を上げてゆくにつれて斜度も増してゆく。主陵線を左に見ながら行くのだが、45度はあろうかと思われる。雪質はしっかりして状態はいい。フラットフッティングからキックステップとなり、ピッケルもピオレカンヌからローダガーに切り替える。陵線に着いた時は、前方に剱沢雪渓が見える。ほぼテン場の高さまでは登ってきたようだ。平蔵谷の標高は2082m、陵線は約2500m。あと500m登ってT峰、U峰を通過し、頂上2999mを目指す。 | |||||||||||||||
稜線から望む八つ峰下部 |
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稜線から望む八つ峰上部 |
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このホームページのTOPにある八つ峰の写真(2008年5月)と比べてみると今回は天候こそ悪いが、雪の量は今年の方が断然多いのがわかる。 | |||||||||||||||
T峰への急登 |
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さらに急になる斜面 |
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陵線に出てからはリッジと急な登攀で恐怖感が増した。写真ではさほど急な斜面は表現出来ないのであるが、壁に張り付いているという感覚さえ持つところもある。そんなところは、しっかりとアイゼンとピッケルを雪面に効かせて一歩一歩登って行った。 | |||||||||||||||
T峰 |
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台形状のリッジのピークはT峰2709mである。尾根は痩せていてナイフリッジ。トレースがしっかりと着いているので問題はない。細い陵線は歩けば気持ちがいいものである。 | |||||||||||||||
T峰からの下降 |
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慎重に足を運ばないと墜落する |
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下から見上げるとこんな感じ |
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T峰からコルへの下降は、先が見えないため、最初ロープで確保して会長が、ルート偵察に下る。バックステップでゆっくりと下りれば問題ないので、慎重に足を運んで下りていった。 | |||||||||||||||
U峰 |
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U峰への斜面は、夏になればお花畑となるそうだ。びっしりと雪がついて所々にハイマツがのぞいていたが、斜度もあってなかなかスリルであった。 | |||||||||||||||
U峰の向こうは懸垂下降 |
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懸垂下降をする井上さん |
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U峰は、懸垂下降で下りる。川村さんがロープをセットし、各自順調に下降し井上さんが回収。 | |||||||||||||||
コルからいよいよ頂上を目指す |
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少しずつ青空が見え隠れする |
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剱沢雪渓を望む(テントが小さく見える) |
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頂上へあと100mの高さまで来た |
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頂上直下へ来ると青空に笑むメンバー |
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日が差した瞬間に・・・剱岳山頂にて@ |
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感極まる瞬間・・・剱岳山頂にてA 12:20着 |
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この瞬間を待っていた。山を始めて約3年。低い秩父の山を登っていた頃、北アルプスの山は憧れだった。休みのタイミングでは、春休みか夏休みしかない。しかも天候が荒れれば当然山には登れないのである。剱岳はこの季節、遭難も多い。雪上訓練や登攀の訓練も満足に出来ないまま、源次郎尾根に登るのは正直不安であった。でもどうしても行きたい。熊本に帰る前にはどうしても・・・という思いもあって気合が入った。山頂にたった時、経験の浅い私は、感動して涙が出そうになった。山頂は風も強く、時々晴れ間を見せてくれたが、よかった。 | |||||||||||||||
下山開始・・カニのよこばいへと向かう |
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ミックスのカニのよこばい |
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プレート |
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時々、晴れ間が覗き平蔵のコルが見える |
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鎖を伝い慎重に下りる |
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セルフビレイをとって伝う |
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横田さん |
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カニのよこばいに差し掛かった。鎖場なのでセルフビレイを施して岩を掴みながらゆっくりと下りてゆく。斜度はさほどでもないので、問題もなく下りる事が出来た。 | |||||||||||||||
平蔵のコルを下りる |
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表層雪崩の跡(これがあのデブリの足跡か) |
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急な斜面を一気に下りる |
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平蔵谷は、時間を稼ぐために一気に下りる。登る前に見た巨大なデブリはここから雪崩が発生し、下まで流れている。表層雪崩の跡を途中で見つけたが、規模からいって間違いない。随分と上から流れているようなので、もしここを下りている時にでも巻き込まれていたならば・・とぞっとする。 | |||||||||||||||
平蔵谷の出合まで一気に下りて一服 14:50 |
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巨大剱沢雪渓を登り返す |
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5時間かけて登り、2時間で下ってきたわけであるが、最後のこの登り返しが、きつかった。ゆっくりと最後尾を希望して、一歩一歩踏みしめて歩いた。瀬下さんが、まだ後ろだったがテント場の少し手前で後ろから登ってくるのが見えた。 | |||||||||||||||
ようやく無事にテン場の戻った。17:15(最終着) |
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5日(木) 夜が明けた。朝日に照らされた剱岳がさらに美しさを増す。テントを撤収して今日は、帰らなければならない。しばらくして、T峰の斜面に登攀者が登っているのが確認できた。今日はいい天気だから最高のコンディションだろうなあ。と思いつつ、撤収の準備をする。 |
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翌朝、朝日に焼ける剱岳 |
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5日テントを撤収して帰らなければならない。(T^T) 名残惜しい |
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準備を整え思い出の一枚 |
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とにかく無事で何よりだった! |
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川村さん |
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剱岳、「また、山においでよ!」と |
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快晴の別山乗越へ |
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山は厳しさと楽しさを人に与えてくれた |
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こんな景色は登った人にしか目に焼き付けられない |
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それぞれの思いでここへ来た |
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最高のGW |
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近づく室堂ターミナルを見下ろす |
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奥大日岳を見ながら稜線を歩く |
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時折シリセードで下りると雷鳥平まではすぐ |
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雷鳥平からは雄山や別山は3日よりも太陽に光っていた |
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10:10室堂ターミナルに着いてしまった |
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雪の大谷へ徒歩で向かう観光客 |
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剱岳・源次郎尾根は、雪山の初心者は行けないところであるけれども、県岳連や市岳連の雪上訓練と会での訓練、そして行くメンバーでの訓練山行とロープワークと滑落訓練などを身に着けることが出来れば容易に行けると思った。しかし実際に登った時に恐怖感でびびって腰が引けてしまっては行けない。力が抜けてしまたら何をやってもうまく行かないだろう。多分、私にとっては最初で最後の残雪バリエーション山行であろうと思います。いい思い出となりました。石倉さん、井上さん、瀬下さん、川村さん、横田さんお疲れ様でした。ありがとうございました。 | |||||||||||||||
車での帰路は、上信越道での1車線渋滞と関越道の渋滞も合わせてひどい渋滞に巻き込まれました。震災の影響で、自粛をしていた人達が、一挙に移動したという感じでした。 | |||||||||||||||