Omiya Alpine Club
山行報告
DATA CONTENTS
日付 2012/5/3〜5/6
宿泊 ツエルト
天気
メンバー 瀬下吉政
歩行時間 1日目・・・ 9時間 2日目・・・13時間  3日目・・・14時間  4日目・・・13時間
アクセス 電車、バス
report by Sesimo
5月3日 曇り後雨
 夜行バスで松本に朝着き、穂高まで電車、穂高から中房温泉までバスで行く。天気は小雨模様、でも上がりそうな気配。中房温泉を9時に出発。合戦小屋を越える頃から、雪が多くなってくる。荷物の重さ(約22Kg)と夜行バスの睡眠不足かペースが上がらない。視界が利かないなかただひたすら登る。燕山荘に着いたときも燕岳は見えず。先を急ぐ。雪は多いもののトレースはある。蛙岩の通過では通常の冬道でないコースを取り恐い思いをする。天候はうす曇程度で遠くの峰は見えないがそこそこみ見える。大天井岳の手前、標高1600m付近でビバークする。準備をしてツエルトに入ると雨が降りだす。夜中中降っていた。
会ったパーティー多数。
5月4日 曇り後雪
 夜降っていた雨も上がり起きた時は曇り。今日は一気に槍ヶ岳の近くまで行こうと、5時に出発する。天候もまあまあであり、雪は腐って入るがトレースもあり。寝不足気味ではあるが、まあまあに歩ける。ただ時々ズボッと足を落とし抜けなくなるのには体力を消耗するので参った。大天井荘から大天井ヒュッテまではトレースもあったので夏道を行った。雪の斜面をトラバースするコースだが、雪が腐っていて、アイゼンをつけているとダンゴになりかえって危険である。途中でアイゼンを外す。 途中追い越された4人組みのパーティーに大天井ヒュッテで追いつく。今日会ったパーティーはこの1組聞くと、北鎌尾根を目指すとのことである。思いのほか、夏道が悪かったとの感想を聞く。この辺から雪道と荷物の重量と睡眠不足からかペースが落ち、槍ヶ岳は無理と判断、最初考えていた水俣乗越からのエスケープルートを取ることにする。疲れてはいるものの、ヒュッテ西岳を目指す。西岳が見える三角点のある地点に着く。少し下がったところに、トレースはあるのだが、そこまでのルートが分からない。ロープを出さないと行けない様なところなので、無理せず、明日にしようと決定し、少し下がったところの雪の斜面でビバークする。何とか持っていた天候もビバークの準備をするころから雪になる。
会ったパーティー1組。
5月5日 曇り後雪
 夕方降りだした雪は明け方まで降っていた。ツエルトは雪に半分潰され風でうるさかった。幸い10cm位の積雪ではあった。多少不安ではあったが、ロープを出して沢を下れば、昨日見えたルートにつながるルートが見つかるだろう。見つかれば先は見えると思い6時にビバークポイントを出発する。ロープを出し、懸垂下降で下りるが、それらしいルートは無い。下りてみると、ロープを使うほどではなく、クライムダウン可能なところだ。途中あちこちそれらしいところを探したが、見つからず。もっと下りてみようかとも思ったが、下りて見つからなかったときには動けなくなってしまうので、西岳までの突破は断念する。 ロープを収納しさあこれから戻ろうとなると、先が長い。帰りの便も考え、中房温泉に下山することにする。つい最近読んだ冬の表銀座の記録で中房温泉に戻らず一ノ沢を下り雪崩に巻き込まれたことが頭に浮かんだ。素直に中房温泉まで戻ることにする。ただ昨日下った、大天井荘から大天井ヒュッテへの夏道が嫌らしかったので、帰りは冬道を行くことにする。地図には冬道は書いてないが、それらしい踏み跡がある。ただ春の冬道はザレ場が始末悪いことに気がつく。仕方ないので背の低い這い松や岩の上を歩く。思った以上に時間を費やす。上りだしたときはまだ明るかったが、途中から暗くなり頂上付近では月明かりとなった。雲も切れ満月の月が顔を出した。昨日通りすがりにのぞいた、大天井荘の冬季小屋に泊まることに決定。遅くなってもツエルトを設営する手間もかからないし快適なので時間はかかっても冬季小屋まで行くことにする。ヘッデン無しでも足元はおろか頂上付近の祠も見える。先月の阿弥陀岳の月明かり山行の経験もあり不安はなく快適に歩いた。頂上から冬季小屋までの道も昨日通った道であり問題なかった。ここまでヘッデンは無しだが、さすがに小屋の中は暗く、ヘッデンをつけて中に入った。8時であった。挨拶をして中に入ったが、下の段に2人パーティー上の段に単独行がもうシュラーフに入っていた。遅くなったことをわびそそくさと食事を済まし、シュラーフに入った。天井は高く、バーナーも思い切り使えたので、お湯を沸かし2Lの湯たんぽとした。2日のツエルト泊でかなり濡れてしまったシュラーフも湯たんぽのおかげで快適に寝られた。参考に湯たんぽの使い方。低温火傷を防ぐため、熱湯を入れた水筒をセーターやダウンに包み、寝袋などの袋に入れる。これで朝まで快適です。
途中会ったパーティー無し。小屋の2パーティーのみ。
5月6日 吹雪後晴れ
 夜中ばたばたしていた音は吹雪だったようだ。朝起きると新雪。気温も低く雪も締まっていたのでアイゼンとピッケルとする。でもストックが便利なときもあるので、両手にストックとピッケルを持つ。斜面の具合のよってはもち換える。常に三点指示ができて急な斜面では便利である。 新雪のトレースの無い斜面を下った。夏道を通ったが、不正解である。トラバースが多くなる。場所によっては、カリカリの氷の斜面だし、場所によっては、ピッケルを刺しても止まらないような斜面である。特にピッケルを刺しても止まらないようなグズグズな斜面では滑ったら終わりなので、真っ直ぐに足と膝まで使って下りた。こんなとき両手にピッケルとストックを持っていると安定している。このころから風と雪が強くなる。夏道に雪は付いているがルートは分かる。トレースは無し。蛙岩の前でルートを見失うが、なんとか見付け突破する。蛙岩を抜ければもう危険なところは無いとホッとする。蛙岩から少し行ったところで、雪のついた夏道が無くなる。この頃になると猛吹雪でホワイトアウトの状態、完全に道を失う。現在の場所もこれから向う方向も距離も分かるが、そこまで行く道が分からない。コンパスやGPSで確認はしたものの、道の無い稜線を100m歩くのも危険である。 この時点で6日中に自宅に帰ることは断念した。夕方までには視界が利くようになるとは思ったが、最悪動けないことを見越し風のない這い松の中にビバークポイントを探してみた。スコップを出し雪洞を掘れるかテストした。完全なものは無理にしてもなんとかツエルトを組み合わせて凌げるポイントを確保した。でもここでビバークすると、連絡が取れなくなるのでせめて燕山荘までは下りたいと思った。すぐ動ける状態で進行方向を見続けた。猛吹雪の中長かったような気がする。でも短かったのかも知れない。瞬間稜線に雪の付いた夏道が見えた。上りなおして、夏道に入るルートはルートに入れない可能性があるので、トラバースして夏道に入ることとする。幸いトラバースに問題はない。そうと決まると早い。最短距離をトラバースし20分以内に夏道に戻れた。ほっとした。 夏道に戻り分かりにくいところはあったが、問題なく歩けた。まだ吹雪は続いている。雪は付いていても夏道は楽である。燕山荘に着いたのは、2時半くらいであった。お腹が空いたので何か食べようと思った。この辺まで時間の感覚が無かったが、もう2時を回っていることを知った。でもここまできたら中房温泉に下りようと決めた。2時までしか出してくれないという昼食をなんとか出しもらい。お茶を3杯のみ小屋を出たのは、3時だった。小屋をでるころは吹雪が収まり、合戦尾根は太陽が出ていた。稜線についている旗もあり安心して稜線を楽しんだ。途中合戦小屋を過ぎる頃からだんだん雪が少なくなり。中房温泉までの時間が長かった。中房温泉に着いたのは7時だった。受付を済ます前に公衆電話から自宅と石倉さんに連絡をいれ。長かった山行は終わった。
途中会ったパーティー2組。
  【附記】
   天国と地獄が繰り返す山行であった。下山して知ったが、遭難が多かったようだ。向こう側に行っていても不思議では無かった。 山頂付近のビバークでなく、温泉の温かい湯船のなかでゆっくり反省した。それにしても余裕の無いときは、写真やコースタイムの 記録どころではなく、時間の感覚さえ怪しくなるの知った。危ない単独行は止めにしよう。危ない中高年登山者と呼ばれないようにしよう。今後体力の無い方、技術の無い方私にお付き合いください。